緑内障は、視神経に損傷を与え、視野が徐々に狭くなる病気で、放置すると失明に至る可能性があります。早期発見と適切な治療によって、進行を遅らせたり、視力の保護が可能です。ここでは、緑内障の概要、原因、症状、診断方法、そして最新の治療法について解説します。

緑内障とは?

緑内障は、眼球の奥にある視神経が損傷を受ける病気です。この損傷の主な原因は、眼圧(眼球内の圧力)の上昇です。しかし、正常眼圧緑内障のように、眼圧が高くなくても発症するタイプもあります。緑内障は進行が非常に緩やかで、初期には自覚症状がほとんどないため、**「静かな視力泥棒」**とも呼ばれています。

緑内障の原因

緑内障の最大の危険因子は、眼圧の上昇です。眼圧が高くなると、視神経が圧迫され、その結果、視力に影響を与えます。その他の要因には以下のものが含まれます:

  1. その他の疾患:糖尿病や高血圧などの全身的な疾患が緑内障リスクを高めることがあります。
  2. 遺伝的要因:家族に緑内障の患者がいる場合、発症リスクが高まります。
  3. 年齢:加齢によって発症リスクが増加します。特に40歳以上の方は注意が必要です。

糖尿病患者は白内障を発症するリスクが高くなります。高血糖状態が続くことで、レンズのたんぱく質が変性しやすくなるためです。

緑内障の種類

  • 開放隅角緑内障: 最も一般的なタイプで、眼圧がゆっくりと上昇し、徐々に視野が狭くなります。
  • 閉塞隅角緑内障: 眼圧が急激に上昇し、強い痛みや視力の急激な低下を伴うことがあります。これは緊急の治療を要します。
  • 正常眼圧緑内障: 眼圧が正常範囲であっても視神経が損傷するタイプです。特に日本人に多いとされています。

緑内障の症状

緑内障の初期段階では、自覚症状がほとんどありません。視野の欠損が始まっても、両目で補完されるため、気づきにくいのが特徴です。以下の症状に注意が必要です:

  • 急激な視力低下や目の痛み(急性の場合)
  • 視野が狭くなる(特に周辺視野)
  • 光が眩しい、または光の周りに虹が見える

診断方法

緑内障の診断には以下の検査が行われます:

  • 眼底検査: 視神経の状態を直接確認するため、眼科医が網膜を観察します。
  • 眼圧測定: 眼球内の圧力を測定し、眼圧が正常範囲内かを確認します。
  • 視野検査: 視野の欠損があるかを調べます。

最新の治療法

緑内障は、完治することが難しい病気ですが、治療によって進行を遅らせることができます。治療法には以下のものがあります:

1. 点眼薬治療

眼圧を下げるための点眼薬が最も一般的な治療法です。点眼薬には、眼球内の液体(房水)の産生を抑えるものや、房水の排出を促進するものがあります。定期的な点眼と医師の指示に従うことが大切です。

2. レーザー治療

レーザーを使って、房水の排出を促す手術が行われることがあります。特に、レーザー線維柱帯形成術は、開放隅角緑内障に対して有効です。

3. 手術療法

点眼薬やレーザー治療で効果が見られない場合、手術が必要となることがあります。手術により新たな房水の排出口を作ることで眼圧を下げます。

4. 最新技術:マイクロインベーシブ緑内障手術(MIGS)

最近では、**MIGS(Micro-Invasive Glaucoma Surgery)**と呼ばれる低侵襲の手術法が普及しています。これは従来の手術よりもリスクが少なく、回復が早い点がメリットです。この技術は、特に初期段階の緑内障に対して効果的です 。

予防と管理

緑内障の予防には、定期的な眼科検診が欠かせません。特に40歳以上の方や家族に緑内障の既往歴がある方は、早期発見が視力を守る鍵です。また、日常生活で以下のことに注意するとよいでしょう:

  • 喫煙や過度のアルコール摂取の抑制
  • 定期的な視力検査
  • 高血圧や糖尿病などの慢性疾患の管理

まとめ

緑内障は早期発見と治療が鍵です。自覚症状が現れる前に、定期的な眼科検診を受けることで、視力を守ることができます。点眼薬やレーザー治療、最新の手術技術を活用し、適切な治療を行うことで、緑内障の進行を遅らせることが可能です。家族や自身の視力を守るため、早めに眼科医に相談しましょう。

参考文献

  1. American Academy of Ophthalmology, “Glaucoma Treatment and Management.”
  2. Mayo Clinic, “Glaucoma: Diagnosis and Treatment.”
  3. National Eye Institute, “What Is Glaucoma?”